顧客側からのサービス提供組織やそこにおける従業員との間に関係を構築・維持しようとする意思がどのように生成され、それらを達成するためにどのような態度や行動が取られるのか、またそれらの意思や行動がフォーマル及びインフォーマルな取引の形成、遂行、評価などにどのような影響を及ぼすのか、などを明らかにすることを試みた。 これらの問題を明らかにするために医療サービスを取り上げ、神奈川県の総合病院において調査を実施した。現在、その結果を分析中であるが、これまでに得られた知見としては以下のようなことがある。 1.顧客(患者)の関係構築意思に影響を及ぼす重要な要因の一つとして満足水準があった。また、その顧客の満足水準と彼あるいは彼女との間でサービス・エンカウンターを頻度的あるいは時間的に比較的多く展開する従業員の職務満足との間には正の関連性が見られた。具体的には、外来患者の満足は医師の職務満足と、入院患者の満足は看護婦の職務満足との関連していた。このことから、従業員の職務満足が彼らの行動に反映され、そのことがサービス品質及び顧客満足に影響を及ぼしていることが推測される。 2.満足している顧客ほど、サービス・デリバリー・プロセスへ積極的に参加する傾向が見られた。サービス・デリバリー・プロセスは顧客、サービス提供組織及びその従業員の協働過程なので、サービス・デリバリーを効果的且つ効率的に行うには顧客の積極的且つ適切な参加は必要不可欠である。提供されているサービスに満足することで顧客はサービス・デリバリー・プロセスへ積極的に参加するようになり、そのことによってサービス品質及び顧客満足はさらに高まるというような好循環が存在しているようである。そして、この好循環によっても、顧客の関係構築意思は形成・強化されているようである。
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