先ず比較的短期における市場データをもとに、証券金融市場の相場変動の分析と影響要因の関係のある程度の定式化を試みた。金融市場全体は複合的な市場であり、そこでの相場変動の要因は多様である。従って直接・間接を含めて、その関係を明示的に示したモデルを構築するのは非常に難しい。加えて投資主体の将来期待要素の反映を試みたが、以前の外為市場のみにしぼった同様の試みに比べ影響関係が複雑化し、制御変数の増加によりデータ使用期間に対してのみの説明力の増加には貢献したものの、最終的に目指す操作性の高い投資における意思決定モデルとしての実用性及び有効性という点で満足のいく結果にはならなかった。主に新聞における経済情報などを代表的な情報変数としてその影響度をプラス、マイナス及びゼロといったものに分類してモデルへの取り込みを試みたが、モデル内における変数相互の影響度の識別という点で、検討及び改良の余地が残った。データ期間も新しいものを使うと、特に日本の場合など、株式市場などに代表されるように構造的に深刻な問題が強く、健全な相互連関をもった金融市場全体という図式が歪んでいる状況下であることに問題の一因があるといえよう。今後の一展開としてデータ期間の調整及び、日本市場だけでなく特に米国市場のデータを使って同様の分析を展開してみることが必要と考えている。異なった市場間の裁定取引やヘッジといった要素は、重要な取引動機でもある以上、それらを考慮したモデルの分析及び、相場形成のメカニズムの把握は、多国籍企業を想定したときの、リスク管理と最適投資運用手法の効率的構築のための試みに役立つはずである。また別の展開として、より長期のデータの使用及び多様な関連市場の取引データの取捨選択と試行の反復がある。投資及び調達の同時決定的なアプローチとしての新たなALM(資産負債の総合管理)という側面から、多様な金融商品の入替が機動的に行えるような投資手法の展開につなげていきたい。また更にデータを新しいものに加え、ニュース要因の分類、再検討を続け、投資手法の再構築を試みつつ具体的モデルの提示を引き続き試みるつもりである。
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