研究概要 |
本研究では,まず生産性支配要因から近年の情報システムがホワイトカラーの生産性向上に有用であることを明らかにし,情報システムを使用してホワイトカラーの生産性を向上させる必要条件として,下記の4つの問題を検討することの意義を示した上で,これらの問題に関するわが国企業の近年の実態を各種の統計資料,報告書,文献等により研究した。それぞれの概略は以下の通りであるが,全体的に見ればわが国企業は一部の問題を除き,欧米等と比較した情報化の遅れを原因として,対応があまり進んでいないという現状を指摘できよう。 1.適切な情報システムへの投資評価法…適切な投資評価法は理論的にまだ確立されておらず,投資の明確な目的の下,厳密な投資評価を実施している企業の数も少ない。今後は,情報化投資の測定と組織業績を結びつけるワイルのモデルの考え方等を参照しながら,この問題へのアプローチを続けてゆく必要性が高いと思われる。 2.能力主義に基づく人事・賃金制度…わが国においてこれらの制度はかなり普及してきおり,その適用範囲も広がりを見せている。特に成果主義の賃金制度を実施する場合は,全体の目標との乖離を防ぐような評価項目の設定や,適切な評価者訓練の実施等が課題となろう。 3.ハード及びソフトの保守・管理体制…現状では,情報システム部門や総務部門等で対処している企業が多い。しかし,EUCの進展やホワイトカラーの生産性向上を総合的に判断するなら,ファシリティ・マネジメントとして実施する必要性が高いと思われる。無論これには適切な予算管理を適用し,計画的な実施が望まれる。 4.情報リテラシ…わが国では花王等の一部の企業を除き,コンピュータ・リテラシが中心であり,ビジネス・リテラシまで考慮されている場合は少ない。また,この問題にも適切な予算管理を適用することが望ましい。
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