青本-Gelfand超幾何微分方程式系の表現論的一般化を谷崎俊之氏は、コンパクトエルミート対称空間上のあるねじれ微分作用素環D_λのある加群として提案した。 A型とC型でねじれ具合が極小軌道に対応する場合には、いわゆるA-超幾何微分方程式系になり、これらに関しては、特性サイクル、回の級数表示、積分表示などが既にGelfandをはじめとする人々によって得られている。しかし、他の場合については非常に少しのことしか知られていない。特に、非自明な解が存在するかどうかさえ知られていない。今回私は、B型とD型の一つについてねじり具合が極小軌道に対応した場合である特別な状況のとき、非自明な級数解を構成し、谷崎氏提案の微分方程式系がA型とD型以外にも非自明なものが存在することを示した。 また、北海道大学の大学院生の和地輝仁氏と共同で、A型とC型の場合に、カペリの恒等式の類似と言える恒等式を発見、証明した。これを用いてこの場合に一般Verma加群のJantzenよる既約判定法と菅修一氏によるb-関数の零点による判定法を直接結び付けた。(これは、Wallachの結果の別証である。)また現在、この恒等式を使って、谷崎氏提案の微分方程式系の研究に応用できないかどうか考察中である。 さらに今年度では、A-超幾何微分方程式系の理論と整数計画法の関連について考察した。この問題に関しては、カリフォルニア州立大学バ-クレイ校のB.Sturmfels氏、神戸大学の高山信毅氏との共著論文を投稿中である。この共著論文では、A-超幾何微分方程式系のb-函数の理論を応用して、実行可能解の母函数を求めるためのアルゴリズムを得、また、A-超幾何微分方程式系の決定多項式を計算して、最適解の満たすべき性質を求めた。
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