本年はミラーシンメトリーの中でも、特にII型の超弦理論をCalabi-Yau多様体の上でコンパクト化した理論において、BPS飽和D-braneについて研究をしてきた。D-braneとは、Calabi-Yau多様体のホモロジー類を実現する体積最小の輪体とその上のゲージ場の対である。ミラーシンメトリーで移り合う二つの理論に応じて代数的輪体と超越的輪体の入れ替えが起こるが、それぞれの場合で定式化される積構造を持つのみならず、その際のD-braneの分類空間が局所的に等しいという予想が出された。いまだ僅かな例でしか確認されていないが、Calabi-Yau多様体の幾何を調べる強力な道具につながると期待した。 まず、数学者と物理学者を交えた勉強会を京都で共催し、さらに分野を絞った集中的なワークショップを伊豆で行ない、議論を深めた。そして、例を構成をすることと、予想の帰路を調べることを主に行っていた。 たとえば、extremal rayのcontractionのファイバーをD-braneのsupportとすると、D-braneのモジュライは(i)Hilbert scheme、あるいは、(ii)全体と同次元の多様体と局所的に同型になると期待される。ミラーシンメトリーでIIB型に移った時に、いくつかの場合は消滅サイクルに対応すべきことを考察した。 また、実数体上定義されたCalabi-Yau多様体の実点集合はD-braneの台の重要な例である。実代数幾何の専門家であるSydney大学のKuo博士らに研究の現状を報告し、博士と共に代数多様体がblowing upによってどのように変わるかを調べ、特に、実平面のembedded curveで、原点におけるgermが一つの枝のみもつものはblow homeomorphismのもので全て同値であることを示した。
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