1.4次元ケーラー多様体上の反自己双対接続を記述する場の理論として、ケーラーWess-Zumino-Witten(KWZW)模型を研究した。KWZW模型は、共形場理論の典型的な例である2次元Wess-Zumino-Witten模型の一つの高次元化とみなすことができ、共形場理論の手法を用いて4次元多様体の幾何学を研究するという立場から興味深い。我々は、この模型のもつ無限次元対称性の構造を調べ、2-トロイダルリー代数となることを示した。これまでも、(反)自己双対方程式がもつ無限次元対称性が議論され、それに基づいて、可積分性が研究されてきたが、今回、我々が明らかにした無限次元対称性は、幾つかの点でこれと異なる性質を持っている。これまで知られていた対称性との関係や、理論の可積分性との関係については今後の研究課題である。 2.別の視点として、位相的場の量子論を用いた4次元多様体の研究を目的としていたが、4次元を離れて、より高次元の多様体上での位相的場の理論の構成について研究を行った。その結果、高次元では一般のリーマン多様体上で位相的場の理論を構成することは難しいが、ホロノミー群がSO(n)の部分群に簡約された空間では可能であることが明らかになった。具体的には、8次元でホロノミー群がSpin(7)の場合(Joyce多様体)とSU(4)の場合(Calabi-Yau多様体)について位相的Yang-Mills理論を構成することができた。
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