研究概要 |
非線形の反応項をもつ放物型偏微分方程式の解として,平面状の境界面をもつ進行波の安定性を論じた.化学において系の状態がある境界面を境に二相に分かれ,その間にうすい遷移層が存在し,それが一定の速度で伝わっていく現象が観測される.これらの現象では通常,境界面は最初に平面状であっても次第に変形し,複雑な形となる.このときに変形の第一段階としての一定の波長の変形が観測される.本研究ではこの現象を理論的に調べた. 平面状進行波について,線形化固有値問題で安定性をしらべた結果として最初につぎのことがわかった.エッセンシャルスペクトラムはすべて実部が負である.すなわち,あとは固有値のみを調べればよい.エヴァンス関数を使う方法によって固有値の分布を調べたところ,固有値はすべて実数であり,上に狭義凸なある関数の上に離散的に分布していることがわかった.この関数はある区間で正の値をもつ.このため,正の固有値が存在し,平面状進行波は不安定であることが理論的に証明された. またさらに,この関数の性質をくわしく調べることによって,最大の固有値をあたえる固有関数の性質が得られた.この固有関数の形により,平面状進行波に微小な外乱がくわえられた直後に生じる一定の波長が得られた.この波長は,活性因子の拡散係数と抑制因子のそれとの積の1/3乗に比例している.この結果は,“Instabiliy of planar traveling fronts in bistable reaction-diffusion systems"として現在,投稿中である.
|