研究概要 |
平成8年度における研究活動は複素微分方程式関係の研究を中心に行ってきました。大きく3つに分けると、代数的微分方程式の許容解の存在・非存在を調べる研究(Malmquist-Yosida-Steinmetz typeの問題)、代数的微分方程式論(Differentially algebraic)と複素力学系の関連の研究、複素振動(Complex Oscillation,Bank-Laine予想周辺の問題)でした。特に、2階の線形方程式の複素振動について、特別な係数をもつ場合についての研究に関して幾つかの結果を得ました。 2階の線形方程式(1)f"+A(z)f=0,A(z)entire functionの解の零点の分布を調べる研究(単にComplex Oscillation)はBank-Laine予想:「(1)でA(z)の位数が半正数でないならば、任意の(1)の基本解の積の零点の収束指数は無限大であろう」また、摂動問題:「(1)の任意の解が零点をたくさん持つときに、(1)でA(z)をA(z)+Q(z),Q(z)は位数が真にA(z)の位数より小さい整函数,に変えた方程式の解はどうか」を考えるために様々な研究がなされている。既に知られていることに、A(z)の零点が少ない場合には解の零点は多いことがありますが、この「少なさ」を連続的に評価してみたいという観点からA(z)=e^<P_1(z)>+e^<P_2(z)>,P_1(z),P_2(z)は多項式,なる場合について調べました。この場合について以下に述べます。 P_1(z)=ε_1z^m+...,P_2(z)=ε_1z^n+...,ε_1ε_2⊃とかくときm⊃n,のときは既に解の零点は多いことが知られています。m=nのときにもε_1/ε_2が実数でないか、実数でも負の値の時はともに同じ結果が得られます。そこで、実数で正値のときのみ問題で、ε_1/ε_2=p,0<p<1と仮定して良くこの場合について、0<p<1/2,3/4<p<1のときも同じ結果が得られました。加えて、p=1/2,3/4の時には反例があることも示しました。
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