研究概要 |
反応拡散系の解構造における拡散の役割について調べてきた.拡散は一般に空間一様化に働くように考えられてきた.事実拡散係数が大きいときは非線形方程式でもその類推はある程度正しいことが知られている.しかし,拡散不安定性のように必ずしも空間一様化と考えてはいけないことも知られてきた.これは拡散項を付けることによって,一様な解が不安定化し,解は時間とともに非一様化していくことがあることを示している.拡散不安定性の発見は後のパターン形成の問題に大きな影響を与えたように,拡散の新しい役割を調べることは意義深いことと思われる. 本研究では特に爆発問題と拡散の役割について考察している.常微分方程式系のすべての解は有界であるにも関わらず(実際にはすべての解は原点に収束する),それに拡散項をつけた反応拡散方程式系の解で有限時間に爆発するような方程式系を作った(溝口・柳田氏との共同研究).このような現象を拡散誘導現象と呼ぶことにする.本来,解の爆発は線形問題では生じず,非線形問題特有の現象である.従って爆発の有無という点では拡散の効果はあまり大きいもののように考えられてこなかった.また拡散が空間一様化に働くとすれば常微分方程式系の解に近づき,有界に留まることが期待されるが,上述の結果によって,拡散を省いただけの常微分方程式系からだけでは解の大域的存在を決定できないことが結論づけられる.
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