研究概要 |
本研究の主な目的は、(1)広島大学理学部に於いてX線観測データの解析システムを構築し、 (2)X線天文衛星『あすか』によって得られたQuiescent状態にあるX線新星のデータ解析から低質量天体のX線輻射メカニズムを明らかにし、(3)過去のX線天文衛星『ぎんが』が取得したアウトバースト時のデータの再解析を行いアウトバースト時からQuiescent状態までの総合的な議論を行うこと、であった。(1)に関しては、多少の問題点を残しているもの概ね達成することができた。(2)(3)に関しては、ブラックホールを含むX線新星のデータ解析から以下の事柄を明らかにした。ただし中性子星のデータ解析では至らず、これは今後、早急に行いたい課題と考えている。 ・Quiescent状態にあるブラックホール候補星を含むX線新星、A0620-00,GX339-4,GS1124-68,GS2000+25,X1543-475etcからのX線は非常に弱く、その上限値(<10^<31-32>erg/sec)しか求められなかった。 ・GS2023+338では、この種の天体では例外的に約10^<33>erg/sec(0.5-10keV)のフラックスを検出した。 またそのエネルギースペクトルは、Photon index〜2.1で近似できる比較的なハードなX線輻射であった。 ・一方、これらの天体の10^<36-38>erg/secのアウトパースト時のX線輻射の共通の共通の特徴として、Power-law型ハード成分と降着円盤起源と考えられるソフト成分が存在すること、強度が減ると共にHigh-stateからLow-stateに移行することが知られていたが、その際Power-law成分のPhoton indexは、2.1〜3.0から1.3〜1.8へジャンブする(連続的な変化ではない)ことが明らかになった。 ・今回得られたGS2023+338のQuiescent時のPhoton index〜2.1という結果は、High-stateからLow-stateへのtransition同様、Low-stateからQuiescent-stateへのtransitionもcriticalであったことを示唆する。
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