私は、赤方偏移1.1のクェーサーQ1335.8+2834の天域についてR、I、Kの3色で測光観測し、得られた画像の詳細な解析を行った。その結果、可視光に比べて近赤外線で明るい天体がクェーサーの周辺に多数クラスタリングしていることを発見した。これらの天体の色、等級は、大まかには古い楕円銀河が赤方偏移1.1にあるとした場合の予想と符号する。赤方偏移1.1を越える銀河団は最近になって他に1例報告されているのみであるので、今回の結果は大変貴重である。また、深い近赤外線による撮像、及び非常に深い可視光での撮像を組み合わせることが、遠方の銀河団の検出に大きな威力を発揮することが証明された。観測された銀河サンプルの色、光度分布から、古い銀河の形成時期のばらつきの大きさや、星形成を行っている銀河の割合などについて、この銀河団における銀河種族の構成が近傍や中間赤方偏移の銀河団中の銀河とはかなり異なる部分もあることは注目に値する。今後さらに詳細な観測、解析を発展させたいと考えている。 今回の観測データの解析は本科研費で購入したワークステーションなどを用いて行った。主要な研究結果については現在論文を投稿準備中であるが、関連する研究成果の報告は日本天文学会平成9年度春期年会や平成8年9月にスペインで行われたQuasar Hostsに関する研究会などで報告済み、または報告予定である。
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