ペロブスカイト型酸化物SrTiO_3は、構造相転移近傍でX線臨界散乱に2つの成分からなる異常なピークを示す。これは臨界現象の揺らぎの平均的広がりを決める相関距離に、より大きなもう一つの相関距離が共存していることを示している。この現象の微視的機構を解明することが本研究の目的である。 この研究を実施するにあたり、我々の研究室で所有する理学電気製4軸型X線回折装置の大規模な改良をおこなった。この装置の回転陰極管は最大で18KWと出力としては研究室レベルでは最大級であるが、不備な点が数多くありそのままでは本研究を遂行することが困難であったため以下の点を整備した。 1. モノクロメター・アナライザーをグラファイトからGe単結晶へ変更し、分解能を向上させた。 2.高分解能化にともない装置のより精密なアライメントが必要となるため、それまではモノクロメターが試料ステージと同一の台上にあったものを分離した。モノクロメターおよびその後方に設置するコリメーターには新しい支持機構を作成した。また、4軸が乗っている試料ステージ全体を新たに作成した耐荷重Xステージ上に乗せ、X線ビームの中心をxサークルの中心に0.01mmの精度であわせることが可能となった。 3.より高度な測定を実行するため、研究代表者が米国ブルックヘブン国立研究所放射光施設NSLSで使用していた制御システムspecを導入することにした。そのために、6軒分のモーターコントローラー・ドライバーを理学電気独自の規格のものから汎用のものへ更新した。これにあわせて新しくUNIXを走らせるためのコンピューターを導入した。現在、これらの機器の立ち上げ作業を行っている。 以上の装置整備が完了することによって、本研究の目的であるSrTiO_3の構造相転移近傍に現れる2つの相関距離の微視的研究がようやく可能となった。
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