量子ホール効果のブレークダウン現象がバルクの効果であるか、あるいは試料端の効果であるかという問題は、量子ホール効果状態下での試料中の電流分布の問題と関連して研究されてきている。これまで量子ホール効果のブレークダウンの臨界電流値の試料幅依存性からブレークダウンがバルク、試料端のどちらで起こる場合もあり、両者を分ける隠れたパラメータがあることが指摘されて来ている。 この研究では、GaAs/AlGaAsの場合にその一つの可能性として、接合界面から離れたドープ層のイオン化不純物により2次元電子が受けるポテンシャル揺らぎの効果に着目し、基板上面、下面両方にゲート電極を設けた速度変調トランジスタ構造の素子を用い、2次元電子の波動関数の接合界面に対する相対的な位置を変化させて、ポテンシャル揺らぎの強度を変化させて、量子ホール効果のブレークダウンの臨界電流値の試料幅依存性を調べることを目指して研究を行った。 実験は、速度変調トランジスタ構造型素子の作製、下面ゲート用高圧回路の作製、高圧用強磁場クライオスタットの作製等を経て行った。 ポテンシャル揺らぎの強度変調の影響を押さえるためには、他のパラメータの変化を抑えた上で測定を行う必要があるため、現段階では、速度変調トランジスタ型素子の上面、下面ゲートによる電子濃度、電子移動度の制御を行っており、目的とした測定まで至っていない。
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