本研究では、マクロ会合体とメゾ会合体のJ吸収帯におけるホールバーニング分光を行った。J会合体配向分散膜試料を用いて、J吸収帯におけるホールバーニング効率の波長・偏光依存性を測定し、配向軸に平行なJ吸収帯では高エネルギー側の量子効率が低エネルギー側に比べて、1/30以上小さい値を示すという極めて特異な現象を発見した。これは、マクロ会合体のホールバーニング効率がメゾ会合体の効率の1/30ということである。ホールバーニング効率は、励起状態から光化学反応を起こすレートと基底状態に緩和していくレートとの比で決まっている。マクロ会合体のホールバーニング効率が低いのは、励起状態の緩和が速いことによるものと考えられる。メゾ会合体の励起状態の寿命として発光寿命から求めた40psを用いるとマクロ会合体の励起状態の寿命は約1.3psと求められる。この値はフェムト秒ポンプ・プローブ分光から求めた励起子対消滅過程による寿命1.5psに対応している。 さらに、試料にホール生成後に変調電場を印加して、ホールスペクトルの電場変調スペクトルを測定する電場変調ホールバーニング分光装置の製作を行った。測定はタングステンランプの白色光を分光し、それをクライオスタット内でヘリウム温度にまで冷却した薄膜試料に透過させて、試料の吸収スペクトルを測定する。レーザー照射前と後の吸光度の差スペクトルをホールバーニングスペクトルとする。電場変調ホールスペクトルの測定には、配向分散膜試料上に蒸着した対向アルミニウム電極間に数百ヘルツ程度の交流電圧を印加し、その透過光強度が印加電場に同期して変化する成分をロックイン検出する。今年度は性能評価を行った。
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