酸化物銅超伝導体のひとつ無限層銅酸化物のCuO_2面の磁気励起を銅の核磁気共鳴法(NMR)を用いて調べた。今回は超伝導の舞台となっている2次元CuO_2面の特殊性を調べるために、1次元CuO鎖物質Ca_2CuO_3、CuO鎖が2本つながった梯子状物質SrCu_2O_3、3本のSr_2Cu_3O_5、それとCuO鎖が無限本つながったと見ることができる2次元CuO_2面物質SrCuO_2についてCuNMRを用いてCuサイトの磁気励起を調べた。一次元CuO鎖では理論から指摘されている温度に依存しない核スピン緩和率(1/T_1)が観測され、理論からの予測とよく一致した。梯子状物質では、理論研究からCuO鎖が偶数本結合した場合と奇数本の場合で磁気励起は異なり、2本鎖の時はJ(銅間の交換相互作用)の半分の大きさのスピンギャップを持ち、3本の時はスピンギャップを持たないことが予測されていた。今回の我々の実験から2本鎖物質SrCu_2O_3について緩和率から650K、ナイフシフトから400Kの大きさを持つスピンギャップが存在することを示した。この物質ではJ〜1000Kと考えられスピンギャップの大きさも理論の予測と一致している。また3本鎖Sr_2Cu_3O_5ではスピンギャップが存在せず60Kで磁気秩序が存在することを示した。これらの研究で梯子状物質についての理論予測が正しいことを初めて示した。また2次元CuO_2面物質では低温で内部磁場を受けた銅の信号を検出し、この物質においても他の高温超伝導体の母物質と同じように磁気オーダーしていることを示した。超微細相互作用の解析から、2次元CuO_2面には回りの銅間と大きな超交換相互作用が存在していることがわかった。この大きな超交換相互作用は1次元鎖や梯子状物質には見られず2次元CuO_2面固有のものと考えられる。この大きな超交換相互作用はドープしたキャリヤ-の移動度と関係していると考えられる。
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