平成8年度においては、当初意図した計画に沿って、以下の研究成果がえられた。磁場中の二電子局在問題を議論するため、ランチョス法による大規模行列対角化のプログラムを作成した。磁場の効果を取り入れるため、純粋な一次元鎖ではなく、鎖を二本用意するいわゆる梯子模型の解析が必要となる。またたとえ二つといえども電子は相互作用しているので大規模行列の対角化のプログラムの開発はこの研究をおこなう際、必須条件となる。これにより2×50の系の対角化を中性能のワークステーションでも高速で行えるようになり、様々なパラメータ、即ち不規則ポテンシャルの強さ、相互作用の強さ、磁場の大きさなどのもとで準位統計を調べられるようになった。詳しい解析を現在おこなっている。 またこうした系で、アンダーソン転移で見られた準位統計のユニバーサルな性質や波動関数のフラクタル性がみられるかは大変興味深い。本研究ではこのアンダーソン転移付近での準位統計を厳密対角化で調べ、準位統計のユニバーサリティを示し、また最近接準位間隔sの分布関数P(s)の形を議論した。また波動関数のフラクタル性については運動方程式の方法で調べ、3次元では転移点での波動関数が、orthogonal、unitary、symplecticとも1.6程度のフラクタル次元を示すことを明らかにした。後者の方法は今後、二電子局在問題に応用する予定である。
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