本研究では、まず、非線形光学結晶LiNbO_3に、励起光としてピコ秒モードロックチタンサファイアレーザーを再生増幅器により増幅した光を、また、シ-ド光としてスペクトル幅約0.2cm^<-1>の光パラメトリック発振レーザーを導入し、光パラメトリック増幅過程を起こさせた。これにより、パルス幅2.8ps、出力約70μJ、可変波長領域2.6〜4.5μm、スペクトル幅約9cm^<-1>の光を得た。このスペクトル幅およびパルス幅は、チタンサファイアレーザーで決まっており、ほばフーリェ限界であることがわかった。一方、AgGaS_2結晶を用いた光パラメトリック増幅によりさらに長波長側での出力の可能性について調べた。その結果、5〜7μmの波長領域で出力30nJ〜1μJを得た。 得られた赤外光源が非線形光学過程の研究に有効かどうかを、LiNbO_3結晶による赤外光について調べた。チタンサファイアレーザーと得られた赤外光を試料表面に入射させ、その和周波光を観測した。試料としては、アラキン酸のLB膜、および金の蒸着膜上にオクタデカンチオール(ODT)を付けた自己組織化単分子膜(SAM)を用いた。LB膜については、C-H結合の振動モードである3μm付近のスペクトルを観測することができた。LB膜は、その工程により一方向に傾いた配向をもつが、和周波信号についても、試料の回転角依存性を調べ、その特徴を確認できた。SAMからの和周波信号においては、金の非線形感受率による信号が非共鳴信号として、ODTのC-H結合の振動モードが分散型をした共鳴信号として観測された。解析の結果、分散型をもつ共鳴信号は、金の非共鳴的な非線形分極と、ODTの共鳴的な非線形分極の間の干渉を反映したもので、その相対位相は、入射光の配置によって変わること等がわかった。また、観測された共鳴信号のスペクトル幅は、約11〜18cm^<-1>で、各振動モードを十分に分離できる分解能をもっており、表面吸着分子の分光に有効であることがわかった。
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