研究の第一段階として北西太平洋の中生代磁気異常縞模様を最新の航海データセットを用いて再検討した。シャツキ-ライズ周辺、中部太平洋海盆、オントンジャバ海台とマニヒキ海台の間の海域で、不明瞭であった磁気異常縞模様の分布を明らかにした。 磁気異常形状解析とは磁気異常縞模様と垂直に交わる磁気異常プロファイルの歪みの程度(skewness parameter)を求めることである。skeweness parameterは磁気異常縞模様の走向、磁化層の残留磁化方向、観測地点の観測時の地球磁場の方向の関数である。本研究では、観測された磁気異常データをフーリエ変換を利用したインバージョン的手法でskeweness parameterを求めた。 日本列島東方沖に存在する日本磁気異常縞模様群のskewness parameterは-230°【plus-minus】20°である。その東方の存在するハワイ磁気異常縞模様群のskewness parameterは-130°【plus-minus】10°である。これらの磁気異常縞模様群ではskewness parameterの年代変化は今回の解析結果からは見られな ナウル海盆から中部太平洋海盆に存在するフェニックス磁気異常群において、年代によるskewness parameterの違いを発見した。ナウル海盆のM19(143Ma)以前の磁気異常縞模様のskeweness parameterの値は-160°であり、それより若い海域では-130°である。この-130°の値はナウル海盆の東にある中央太平洋海盆の値と同じである。年代による磁気異常縞模様の走向の違いはほとんど見られないため、このskeweness parameterの違いは、海底の磁化層の残留磁化方向の違いに起因する。この残留磁化方向の違いは、スーパープリュームにより白亜紀に起こった大規模火成活動のために磁化層の残留磁化方向が変化したためであると考えられる。
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