1超伝導重力計は、地震の信号の入力に対してしばしば非線形な応答を示すが、これは地震周期帯における感度が高すぎることに原因がある。超伝導重力計の周波数特性を決めているフィードバック回路の構成について理論的に考察し、地震周期帯における特性を現実の地震信号により適したものに改良するための検討を行った。その結果、STS地震計などで用いられている方式の一部を取り入れ、フィードバックに積分パスだけでなくダイレクト・パスを追加することにより、潮汐周期帯の特性にあまり影響を与えずに地震周期帯の感度を下げられるという見通しを得た。 2気象庁精密地震観測室(長野市松代町)において、超伝導重力計と広帯域地震計(STS-2型)による並行観測を行い、約1年にわたる連続観測データを得た。その際、超伝導重力計のフィードバックには、時期によってダイレクト・パスを使用した場合と使用しない場合とがある。得られた多くの地震(近地および遠地)の記録を用い、広帯域地震計のデータをリファレンスとして、地震に対する超伝導重力計の応答特性を調べた。その結果、ダイレクト・パスを使用した場合には、理論的に予想されたように、地震周期帯における感度を下げ、信号の飽和をおさえる効果があった。このように、フィードバック回路にダイレクト・パスを追加するというわずかの回路の変更だけで、特性の改善にかなりの効果を実現できることがわかった。 3フィードバックにダイレクト・パスを使用すると、潮汐周期帯における位相遅れがやや大きくなることが理論的に予想されたが、実際に潮汐解析を行ってみると、結果にその影響が現れていることがわかった。これは地震周期帯での特性を改善したために生じた代償であるといえるが、位相の補正を適切に行えば、結果を解釈する上では問題にならないことが確認された。
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