熱帯収束帯(ITCZ)は全球規模のハドレー循環の上昇域であり、活発な対流と高い降水量で特徴づけられている。古くから知られているように、東部太平洋と大西洋では、熱帯収束帯は太陽の季節進行に追随せず、一年中北半球に停滞している。このITCZの北太平洋への偏在を説明するものとして、海陸分布の南北差に原因を求める大陸強制説と最近提案された大気海洋相互作用説があります。本研究は大陸による強制も大気海洋相互作用もこの問題を理解する上で不可欠な要素と考え、大陸強制に対する熱帯域の大気海洋結合系の応答を明らかにすることを目的としている。 まず、南北反対称なロスビー波が西へしか伝播しないという大規模大気運動の特徴に着目し、太平洋ITCZに南北非対称性をもたらす強制はアメリカ大陸から来るものであると提案した。また、アメリカ大陸による強制を数値モデルに与え、それに励起される南北反対称な大気海洋結合波が西へ伝播することによって、太平洋に亘ってITCZの南北非対称性がもたらされることを示した。更に、以上の実験の本質を表現する解析モデルを作成し、この大気海洋結合波の復元力は風・蒸発・SST間の正のフィードバックであることを確認した。 このように大陸強制説と大気海洋相互作用説は、決して互いに矛盾するものではなく、両説の融合こそITCZの南北非対称問題を解決する鍵となった。ここで発見された大気結合波は従来のENSO modeとは異種のものであり、熱帯気候の形成・変動問題への応用が期待される。
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