オホーツク海の海氷の変動を、複数の人工衛星のリモートセンシングを用いたデータ解析、及び大気大循環の客観解析データにより調査した結果、次にあげる結果が見いだされた。1)1989年を境にオホーツク海の南部の海氷が激減し、現在も寡少状態が継続している。2)この年を境に70年代中盤以降強まっていたアリューシャン低気圧が再び弱まっている。また、北極を中心とする極渦が強まっている。オホーツク海ばかりではなく半球規模で気候がこの年を境にジャンプしていることもわかった。3)オホーツク海の海氷の変動はアリューシャン低気圧の勢力の強さに大きく依存している。従って、アリューシャン低気圧の長期変動が、最近のオホーツク海の海氷の変動の一つの原因として考えられる。3)オホーツク海の海水温も1989年を境に高温化している。4)中高緯度の大気海洋は、熱帯のエルニーニョの変動の影響を受けて変動していると言われてきたが、本研究によると、近年の大気系の大きな変動は、エルニーニョとは無関係であることが示唆された。5)これらをまとめると、北半球規模で、大気海氷海洋結合系が1989年を境に大きくその状態を変えていることが示唆された。 今後、オホーツク海、及びベーリング海の海氷の変動と大気海氷海洋との相互作用を大気大循環モデル、海氷海洋モデルを用いて、お互いがどのような関係にあるをを調べて行き、アリューシャン低気圧に代表される、太平洋規模の気候ジャンプが起こる原因を調べて行く予定である。現在すでに、海氷海洋モデルによる大気変動に対する応答実験を開始している。
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