本研究では、インドネシア・ジャカルタで1992年以来中間圏・下部熱圏の風速を観測している流星レーダーのデータを解析し、赤道・低緯度域で観測を行なっている他のレーダー観測と比較解析することにより、1日周期大気潮汐波、赤道波など低韓度域で卓越するものの解明の遅れているグローバルな大気波動の構造を解明することを目的とした. まず、ジャカルタ流星レーダー(東経107度、南緯6度)の観測結果を処理して、東西風・南北風のデータベースを作成し、同じ高度・時間分解能でクリスマス島(西経158度、北緯2度)、ハワイ(西経157度、北緯22度)、アデレイド(東経138度、南緯35度)を同じ分解能で処理してデータベースを作成した.その後、平均風と1日および半日周期成分をフィッティングして2次データとし、それらの相関解析やクロススペクトル解析を行なった.その結果、赤道域において平均風や潮汐が激しい年々変動を伴う半年周期変動と示すことが見出された.また、短周期の変動として5〜30日周期の変動が観測されたが、それらの観測地点間の相関は低く、振幅、位相等のパラメータの相関解析から局所的な重力波との相互作用で潮汐が変動している可能性が示唆された. 解析は2日波、3日周期ケルビン波などにも行い、グローバルな振幅増大か認められるとともに、鉛直方向の運動量輪送に大きな貢献をなしている可能性が示唆された.さらに、観測期間は限定されるがUARS衛星によるグローバルな観測結果を比較することにより、衛星観測では曖昧さの多い波動周期の情報をレーダー観測解析結果から補完し、これらの波動が運動量の緯度方向の輪送にも重要な役割をしていることが示された.
|