地殻深部の断層岩であるマイロナイト帯の中心部には、ウルトラマイロナイトと呼ばれる超細粒岩がみられることがある。ウルトラマイロナイトは動的再結晶によって生じ、変形しているのか、拡散クリープによって変形しているのか、あるいは脆性変形が関与しているのか?この問題を扱うために、再結晶過程と拡散過程について、それぞれ理論的に考察した。まず、動的再結晶に伴う粒径分布を確率モデルによって調べ、さらに平均粒径の応力および温度に対する依存性を定式化した。一方、拡散クリープについては、応力場の下での結晶内部拡散を非平衡熱力学によって定式化し、Nabarro-Heringクリープに新しい解釈を与えた。 天然の超細粒岩の組織を観察するためには、従来の偏光顕微鏡では分解能に限界がある。そこで、走査型レーザー顕微鏡を用いた新しい方法を試みた。畑川断層帯のウルトラマイロナイトの試料を研磨した上、フッ化水素アンモニウムによってエッチングし、これをレーザー顕微鏡の反射共焦点画像で観察することにより、結晶粒界を鮮明にとらえることができた。走査画像をコンピューター画像処理によって2値化し、結晶粒界を抽出することができた。さらに、反射率の違いを画像処理によって判別し、構成鉱物を色分けすることを試みている。
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