紀伊半島中央部に分布する大規模砕屑岩脈について、奈良県川上村中奥川上流域の赤倉橋周辺を主調査地として研究をおこなった。調査地の岩脈は全体として幅27.8m、走向N80°Eで垂直の傾斜を持つ。岩脈は650m以上連続して分布しているものの、より下流で見られる別の砕屑岩脈とは雁行配列している。また、これまで未報告の別の砕屑岩脈が調査地の北方に2枚見られ、いずれも幅20m以上でほぼ東西走向をもつ。以上のことから、砕屑岩脈はセグメントの集合からなり、連続する一枚の岩脈でないことがわかった。 岩脈の内部構造として砕屑物の帯状配列は見られないが、レンズ状・紡錘状の礫の濃集部が多く観察され、走向に平行に伸びる。礫形は円礫〜角礫まで多様で礫種はチャート・石英斑岩・泥岩・砂岩・石灰岩・粘板岩・緑色岩・長石片・石英片が確認できる。量的にチャートと石英斑岩が卓越する。岩石試料を室内で切断し、切断面上に見られる礫径測定の結果では中央粒径Md_φは約-2.4、平均粒径Mzは約-2.4である(測定数326個)が、これらの値には露頭で見られる巨礫〜大礫(最大40×20cm)は含まれず、全体としては淘汰が悪い。 石英斑岩礫およびマトリックスに含まれる自形〜半自形のザクロ石9個をWDSを用いて分析すると、全てがアルマンディンであった。アルマンディン成分は、マトリックス中の1試料(コアで約65%)を除き、79〜86%の狭い範囲を示し同源である可能性が高い。 岩脈に含まれる石英斑岩礫は13.7±0.7Ma(K長石、K-Ar法)を示し、少なくともこれ以降に形成されたことが明らかである。この年代は熊野・大峯酸性火成岩類のそれと一致することから、大規模砕屑岩脈に対するそれらの火成活動の寄与を検討する必要がある。
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