研究概要 |
科学研究費の補助により,炭酸塩岩の堆積相・堆積サイクル・続成組織について研究した.研究対象は1)韓国北西部とタスマニアの中部オルドビス系(前年度までに試料採集済)・2)岡山県北房町と山口県秋吉台の石灰-ペルム系・3)愛媛県城川町のジュラー白亜系・4)沖縄県今帰仁村の更新統である.地質時代的に見ると,1と3は温室期,2と4は氷室期に当たる. 韓国のオルドビス系については詳しい堆積相・続成相解析を行い,全般的に海水準の変動幅が小さい状況下で極浅海域に堆積したものであることが解明し,それが温室期特有の堆積機構であると結論付けられた.また,続成鉱物としては極めて珍しいホタル石を発見し,その生成メカニズムに関する論文(Kano & Lee,1997)を公表した.タスマニアのオルドビス系については,造礁生物の層位学的分布や生態について検討を行い,詳しい記載を基に,群集の多様化が汎世界的な寒冷化に関連するという可能性を論じた((Kano & Fujishiro,投稿中).同じ温室期である愛媛県のジュラー白亜系の試料では堆積相の検討を行ったが,堆積相の変化は汎世界的な気候状態を反映しているというよりも,テクトニクスに規制されている可能性が高かった. 以上の温室期の炭酸塩岩と比較して,中国地方の石灰-ペルム系と沖縄県の更新統における氷室期の試料は堆積サイクルと続成相の点で大きく異なっている.これは短周期(10^4〜10^5年)の大きな海水準変動の振幅に由来するものと結論付けられる.氷室期では堆積場の地形が複雑で堆積環境(深度・海水循環)が多様であり,炭酸塩岩が淡水続成作用を大規模に被っている.ただし,中国地方の試料では期待されたほどの大規模なカルスト化の痕跡は見つからなかった.
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