本研究の目的は、太古代〜原生代の高度変成岩に含まれるジルコンの年代を測定し、初期地球における変成作用のサイクルを決定することである。変成作用において、岩石は原岩の形成、部分溶融、変成作用、新期貫入岩の貫入など、様々なイベントを受けている。これらの記録は岩石中に残されているはずであり、本研究では各イベントの年代から高度変成作用の形成に要した時間を推定することを目的とした。なお、調査研究地域は南部アフリカのリンポポ帯北縁部であり、この地域は太古代末期にグラニュライト相の変成作用を受けたと考えられている。分析は東工大理学部のSIMSを用いて行った。 ウラン、鉛分析をおこなったジルコンを抽出した岩石は、(1)マグマ起源と考えられるチャノッカイト、(2)ミグマタイトの優白色部-1(L1:石英-斜長石-カリ長石-ざくろ石)、(3)ミグマタイトの優白色部-2(L2:石英斜長石-カリ長石-斜長石-斜方輝石-黒雲母)、(4)変成作用後に貫入したペグマタイト的岩石(L3:変成作用終了の年代)である。ジルコン年代から、原岩であるチャノッカイトから28億年の年代が得られた。その後、チャノッカイトはミグマタイト化作用を被っているが、L1、L2ともに26〜27億年の年代が得られた。鉱物組み合わせから、この変成作用は800℃近い条件でおこり、ピーク変成作用と考えられる。一方L3も26億年前後の年代を示し、リンポポ帯北縁部が比較的短期間でグラニュライト相の変成作用を被ったことが明らかになった。
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