研究概要 |
阿蘇中岳の第一火口には湯溜りがあり、その南側火口壁には噴気地帯がある。噴気地帯から噴気ガスを採取するのは困難であり、過去に数度採取されただけである。本研究では阿蘇中岳第一火口の南西クレーターリム上で火山ガスプリュームの化学成分の測定をNDIR・CO_2分析計、パルス蛍光法SO_2分析計や、電気化学式拡散型ガスセンサー(SO_2,H_2S,HCl)を用いて行った。火山ガスプリューム観測を1996年7月末に3日にわたって実施した。 その結果、この時期、クレーターリムでの大気中のSO_2濃度はしばしば10ppmを超え、最高では瞬間値40ppmを超えることがあった。風向きなどの気象条件によって、1時間の平均SO_2濃度が15ppm以上と高濃度の状態が続くこともある。また、CO_2、SO_2、H_2Sなどの測定から、阿蘇中岳の火山ガスのCO_2/SO_2比は1から3の値を持つことがわかった。データを解析した結果、阿蘇中岳の火山ガスプリュームは少なくとも以下の3つの端成分の混合であることが明らかになった。(1)大気,(2)CO_2/SO_2比が約1の噴気ガス,(3)CO_2/SO_2比が3の噴気ガス。H_2Sの濃度はSO_2に比べ一桁小さいようである。目視観測からは2種類の噴気は湯溜りからのガスと南側火口壁の噴気地帯からのガスに対応し、CO_2/SO_2比の値はそれぞれ1と3である。CO_2/SO_2比に関して、どちらがどの値を持つかはっきりとしていない。今後、さらに観測を続けることで明らかにされるであろう。
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