研究概要 |
多摩川において採取した試料をガラス繊維濾紙Whatman GF/D(孔径2.7μm)、GF/C(孔径1.2μm),GF/F(0.7μm)、およびテフロンフィルターAdvantec(0.1μm)で逐次濾過し、2.7μm以上、1.2μm-2.7μm,0.7μm-1.2μm,0.1μm-0.7μm,0.1μm以下の画分に分画した。対象とした化合物はアルキルベンゼン,多環芳香族炭化水素、PCBで、それぞれ6-phenyldodecane,benz[a]anthracene,CB138について考察を行った。孔径1.2μm以下のいわゆる"溶存態"画分に25%以上のアルキルベンゼンとPCBが存在した。そのうち0.1μm以下に存在するものは数%で大部分(全体の20%以上)は0.1μm〜1.2μmのコロイド画分に存在した。これまでいわゆる"溶存態"といわれていた部分の大半(80%以上)が0.1μm以上の大きなコロイド粒子に吸着しており、コロイド粒子の疎水性汚染物質の輸送媒体としての重要性が明らかになった。 0.1μm以下の画分とそれ以上の各画分でのアルキルベンゼン、PCBの有機炭素当たりの吸着定数を計算した結果、それぞれlog Koc=6.83〜7.48、6.46〜7.14となり、いずれも水-オクタノール分配係数のlog Kow=8.00、7.44よりも小さくなった。このことは、0.1μm以下の画分に存在するコロイド粒子にこれらの化合物が吸着されて存在しているために、見かけ上溶存相(<0.1μm)へ分配が偏っているためと解釈された。一方、多環芳香族炭化水素についてはlog Koc=6.85〜7.40となり、log Kow(5.91)よりも小さくなった。このことは、化石燃料の燃焼生成物の多環芳香族炭化水素は煤と強い相互作用があり、水相へ分配されにくく、分配が粒子相に偏っているためと解釈された。
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