研究概要 |
天然における酸性変質現象は、過去から現在までに行われてきた変質作用の累積結果であり、残留岩石の化学組成や鉱物組成から変質過程や条件を完全に明らかにすることはできない。また天然での変質過程はその系は動的であり、溶解した溶質は絶えず系から除外されることが多い。そこで変質作用の各種因子を整理・単純化して酸性溶液と岩石とを動的な系で反応させるモデル実験を行った。岩石中のNa,K,Ca,Mg,Fe,Al,Siの7成分の溶脱量から各成分の溶脱指数を求め、溶脱過程を解析した。その結果、成分間の相対的な溶脱の難易は常に一定ではなく、Na,Ca,Alの3成分は急速に溶脱が進のに対して、K,Mg,Fe,Siの4成分は緩慢に溶脱が進むことが示された。また、Siは変質が進につれて7成分中でもっとも溶脱しにくくなり、残留岩石中のSiO_2の割合だけが増加することが示された。これは天然で酸性変質作用を受けた岩石の成分変化と一致している。更に,岩石中の各成分の溶脱量を比較すると、実験に用いる岩石は斑晶を含まない隠微晶質であるにもかかわず、Na,K,CaはAlと強い相関があり、Mg,FeはAlと相関がなかった。これはガラス中にも輝石や長石のようなsilicateの構造単位が存在している可能性を示唆しており、network silicateとchain silicateの酸性変質作用に対する耐性の差が各成分の溶脱の難易に対して大きく影響しているものと考えられる。この観点から、silicateの構造と各成分の溶脱過程との関係について検討すべく、実験を継続中である。
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