コバルト-炭素結合を有するコバロキシム錯体の結晶に光を照射すると、コバルト-炭素結合が切断し、ラジカルが生ずる。この光照射時の励起状態の構造についてX線回折法により測定しようというのが本研究の目的である。 まず、アルキル基としてR-1-シアノエチル基、塩基としてS-フェニルエチルアミン・ピリジンおよびジエチルフェニルホスフィンを持つコバロキシム錯体を合成した。 予備測定として、まず始めに、S-フェニルエチルアミンおよびピリジンを持つ試料のエタノール溶液の吸収スペクトルを測定した。その結果、S-フェニルエチルアミンを有する錯体は415nm付近に、ピリジン錯体は430nm付近にごく弱い吸収ピークが見られた。次に、これらの試料のメタノール溶液および粉末の蛍光スペクトルを測定した。波長415-430nmの光のほかに350-550nmの光を励起光として使用したが、顕著な蛍光は見られなかった。 ジエチルフェニルホスフィンを持つ錯体の結晶について、四軸型X線回折計を用いて測定を行った。測定は、装置全体を黒い模造紙で覆い暗室状態とした場合およびキセノンランプで結晶を照射しながらのふたつの場合について行った。ジエチルフェニルホスフィンを持つ錯体を選んだのは、光照射によっても固相反応が進行しないことがわかっているからである。 現在データ解析を進めている。
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