固体触媒表面上で反応機構を解明してゆく為には、キャラクタライズされた表面を用いて反応条件下で生じる微量の反応中間体や準安定な吸着種を高感度でとらえることが重要である。本研究の目的は、単結晶表面より実際の触媒に近いモデル触媒表面を用いて、高感度反射吸収赤外分光(RAIRS)法により反応条件下で表面吸収種をとらえることである。 RAIRS法は反応条件下の吸収種のその場観察に有効な振動分光法で、金属表面上では高感度測定が可能であることが知られている。しかし、触媒の担体として用いられるSiO_2などの酸化物表面上では一般に感度が低く、モノレイヤー以下の吸収種のRAIRS測定は非常に困難である。本研究では、Si基板上にCVD法によりSiO_2(50nm)/W(70nm)/Si(100)なる構造をもつ試料を作製し、設計・製作を行ってきたRARIS装置を用いて測定を行った。SiO_2薄層の下にW金属層を埋め込んだこの試料を用いることで、SiO_2表面上に吸着した水酸基、メトキシ基について金属表面上の吸着種と同程度の感度でRAIRS測定が可能となることを明らかにした。さらに、このSiO_2上の表面水酸基について、同位体交換やメタノールとの反応によるメトキシ基生成といった反応過程についてのRAIRS測定にも成功した。 また、このSiO_2(50nm)/W(70nm)/Si(100)表面上に金属塩を用いてspin coating法でCuを担持後、焼成、還元して粒径の揃ったCuクラスターを調製した。この表面上でもモノレイヤー以下の水酸基、メトキシ基、ギ酸イオンをRAIRSにより観測することに成功し、メタノール分解反応過程についての知見が得られつつある。
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