ゾルゲル法を用いて二酸化チタン電極を作製し、2価の銅イオンをドープした。この電極をペルオキソ二硫酸水溶液中で負の電位を印可したところ、強い電解発光が観測された。フォトルミネッセンスとのスペクトルの比較により、この電解発光を一価の銅イオンの発光に帰属した。この発光は銅のドープ量、印可電位により変化した。銅のドープ量を多くすると、また印可した電位を大きくすると発光は長波長側に移動した。この発光は銅(I)-銅(I)ダイマーの発光位置と一致した。以上のことから、ゾルゲル法で作製した二酸化チタン電極中にドープした2価の銅イオンは、二酸化チタン電極から電子を受け取り一価となる際に電子が励起状態の軌道に入り、そこから発光を示すものと思われる。また、この励起状態の銅(I)の濃度が上がると、二量体を形成し、二量体準位からの発光を示すと思われる。 また、並行して一般的な発光体であるタングステン酸塩およびモリブデン酸塩の励起スペクトルの帰属と発光過程の考察を行った。タングステン酸塩の励起スペクトルは約5eV付近に観測され、一重項への励起と考えられてきたが、発光性のタングステン酸塩の薄膜合成が容易ではなかったため、吸収スペクトルはほとんど知られていなかった。本研究では蒸着法による薄膜化法を開発し、吸収スペクトルを測定した。その結果、5eV付近の励起スペクトルに対応する吸収は見られなかった。このことから、5eV付近にある励起スペクトルは三重項への遷移であると考えられる。更に、配位座標モデルを用いて発光スペクトル、励起スペクトルの解析を行った。励起状態での結合強度の変化を考慮することにより、発光スペクトル、励起スペクトルに最適化することが可能となり、再配向エネルギーを見積もることができた。
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