われわれはパルス霧化法と同様な手法を用いて大きくそして熱緩和したクラスターを生成するガス中レーザー蒸発源の開発に成功した。ガス中レーザー蒸発法は従来超微粒子の生成手法である真空蒸発法をパルス化した手法である。真空蒸発法はサイズが100万を超え、しかも熱緩和した超微粒子を生成する優れた手法であるが、多量の冷却気体を使用し、また、高沸点物質の超微粒子を生成するのが困難であるという欠点を持っていた。ガス中レーザー蒸発源は真空蒸発法の優れた点をそのまま保持しながら、高沸点物質を取り扱え、また、使用冷却気体が少ないため高真空を必要とする質量分析器に直接接続することなどが可能である。 この装置は冷却ガス導入バルブと超音速分子線バルブの二つのバルブと蒸発質を使用して、超微粒子生成法である真空蒸発法をパルス化することに成功した。まず、冷却ガス導入バルブから1〜10TorrのHeを蒸発室に導入し真空蒸発法と同様な冷却条件を実現する。次に532nmのレーザーを導入し、炭素などの試料を蒸発させ、既に導入してある冷却気体によって穏やかに冷却し、大きく熱緩和したクラスターを生成する。生成したクラスターを超音波分子線バルブからのジェットでクラスタービームを作り、質量分析などの測定器の導入する。 この方法で、われわれはC_<2000>以上の巨大クラスターを初めて生成することに成功した。この手法を用いると従来のレーザー蒸発源に比べ5倍以上のサイズのクラスターを生成できる。また、金属過剰アルカリハライドクラスター、およびアンモニウムハライドラクスターを生成することに初めて成功した。これらのクラスターは、総合力が弱く不安定なため通常のレーザー蒸発法では生成できない。このように、このガス中レーザー蒸発源ではこれまで生成できなかった。大きく熱緩和したクラスターを生成することができる。クラスター生成過程や生成したクラスターの応用についての研究を現在進めている。
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