本研究ではケイ皮酸(CA)およびケイ皮酸長鎖誘導体(C_<22>CA)からなるLangmuir-Blodgett(LB)膜を銀基板上に種々の条件で作成し、その光反応に伴う構造変化を赤外反射吸収法で調べることで、結晶状態と異なる単分子膜特有の分子集合状態およびその分子構造と光反応機構との関連について明らかにすることを試みた。その結果、以下のことが明らかになった。 [1]CAの結晶はtrans-DIMERとcis-DIMERの2種類の構造からなる。両構造のエンタルピー差は356cal mol^<-1>となる。 [2]C_<22>CAの結晶はcis-DIMERの構造からなり、紫外光照射により二量化反応する。 [3]C_<22>CAのLB膜1層は3種類の構造からなる。単分子層内でお互いに水素結合したlateral hydrogen-bonded state構造、cis-DIMER構造、それとv(C=O)バンドを1684cm^<-1>に与える構造である。このうちlateral hydrogen-bonded state構造は光反応性を示さないが他の二つの構造は紫外光照射により二量化反応する。 [4]C_<22>CAのLB膜を累積することで単分子膜間でC_<22>CA分子同士が水素結合したface to face hydrogen-bonded state構造が生成する。この構造はLB多層膜中で紫外光照射により、lateral hydrogen-bonded state構造に変化する。またこのface to face hydrogen-bonded state構造は熱的に不安定であり、加熱処理によりtrans-DIMER構造に変化し紫外光照射により二量化反応するようになる。
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