グリッド法を用いた量子波束の時間発展問題では、ハミルトニアンは離散化された波動関数に作用する。ここでは運動量演算子部分の評価について、関数補間の立場から再検討した。 ハミルトニアンの運動量部分には微分演算子が含まれるため、離散的に表された波動関数に直接、作用させることはできない。そこで、サンプル点間を補間する適当な関数を求め、補間関数の微分で代用することになる。一般によく使われる離散フーリエ変換を用いた手法は、三角関数exp(2πinδ_fx)による補間と見なすことが出来る。今回、検討した3次の自然スプラインは、サンプル点で区切られた各区間ごとに独立な3次の多項式を置き、境界で2次の微係数まで連続になるように係数を定めた関数である。 フーリエ変換法について詳細に調べたところ、関数が実空間・周波数空間の両方で充分に局在しているならば、離散フーリエ変換を用いた微分の評価は、数学的に厳密な結果を与え得ることがわかった。2次の微係数の精度を、スプライン関数法とフーリエ変換法の両者で比較すると、ガウス型波束など、上記の条件を満たす関数については、フーリエ変換の優位性は明らかであった。しかし、指数関数的に減衰する関数など、周波数空間で幅広い分布を持つケースでは、スプライン関数法の方が少ないサンプル点数で良好な結果を得ることができた。スプライン関数法で必要な計算量は、ほぼサンプル点の数Nに比例するので、高速フーリエ変換の計算量NlogNよりも若干、軽い。また、サンプル点を少なくしたときの劣化がフーリエ変換法に比べて穏やかなので、高次元系など、サンプル点を疎に取らざるを得ない系で、より有効な手段と思われる。
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