(1)置換フェニルチイルラジカルのgテンソルの測定:アミノ置換および無置換のジフェニルジスルフィドについて低温マトリックス中ESR測定を行いフェニルチイルラジカルのg値の異方性を測定した。無置換フェニルチイルラジカルの方がアミノ置換のフェニルチイルラジカルよりg値の異方性が大きいことがわかった。(2)磁場効果 : p-アミノジフェニルジスルフィドをSDSミセル中でキサントンを用いて三重項増感し、0〜10Tの磁場下で生成するフェニルチイルラジカルの消失過程を測定した。散逸ラジカル収量は磁場の増加と共に1T程度まで増加するが、その後は減少に転ずる。10T付近でほぼ0Tと同じになる。ここで生成するラジカル対は2個の等しいフェニルチイルラジカルからなるので、△gは完全に0であり△g機構による磁場効果は除外できき、緩和機構のみによる磁場効果と考えられる。(3)常磁性イオン添加効果:本反応に常磁性イオンであるガドリニウムを添加して磁場効果を検討した。ガドリニウムの添加によって低磁場、高磁場いずれの磁場効果も徐々にクエンチされ、数ミリモル/Lでほぼ全体の磁場効果が消失した。この結果は本磁場効果が緩和機構のみによることを示唆する。(4)磁気同位体効果による硫黄-33の磁気同位体濃縮:本反応系の前後で磁気同位体硫黄-33の変化をICP-MSおよびGC-MSで行った。ICP-MSの場合、酸素による妨害が大きく、変化量に見合う精度で同位体比測定ができないことがわかった。次にGC-MSを用いて同位体比測定を行った。その結果、99%程度の反応で硫黄-33が4%程度増加することがわかった。
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