アセトニトリルまたはジクロロメタン中で、硫黄架橋をもつ不完全キュバン型モリブデンアクアクラスター錯体[Mo_3S_4(H_2O)_9]^<4+>と、ユウロピウムトリス(ジピバロイルメタネート)とが反応することを確認した。反応後の電子スペクトルは[Mo_3S_4(H_2O)_9]^<4+>にプラセオジムトリス(ジピバロイルメタネート)を反応させた後の電子スペクトルと異なることから、Mo_3EuS_4^<7+>骨格が生成したものと思われる。現在はカラムクロマトグラフィーにより目的物のMo_3EuS_4^<7+>骨格をもつ錯体の単離および結晶化を試みている。また、[Mo_3S_4(H_2O)_9]^<4+>と、ユウロピウムトリス(ヘプタフルオロブタノイル-ピバロイルメタネート)との反応も進行することを確認している。 一方、不活性ガス雰囲気下、水溶液中で2価のユウロピウムイオンを[Mo_3S_4(H_2O)_9]^<4+>に反応させたところ反応は進行し、反応後の溶液をカラムクロマトグラフィーによって分離することによって新規錯体を単離することに成功した。元素分析の所見から、この反応ではユウロピウムはモリブデンクラスター錯体には取り込まれず、Eu^<2+>の還元力により[Mo_3S_4(H_2O)_9]^<4+>の骨格が壊れ、これまでにないモリブデンクラスター錯体が生成したものと思われる。現在は新規錯体のX線構造解析を試みている。その他[Mo_3S_4(H_2O)_9]^<4+>と反応させる希土類元素錯体として、エチレングリコールを配位子とするユウロピウム錯体の合成および結晶化に成功し、X線構造の決定に成功した。また、クラウンエーテルを配位子とするイッテルビウム錯体、アセチルアセトナトを配位子とするユウロピウム錯体の合成にも成功し、現在[Mo_3S_4(H_2O)_9]^<4+>との反応を試みている。
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