研究概要 |
光励起により大きな双極子モーメントを有する状態を作りだし、これによって近接した電子移動系(例えばカルバゾールとジメチルテレフタレート系)の電子移動効率を制御することを実現することを目指した。今回は基礎実験としてカルバゾール(電子供与体,Cz)とジメチルテレフタレート(電子供与体,DMTP)を用いて、光励起によって生ずる光電流を測定する実験を行った。薄膜作製のポリマーとしてはポリメチルメタクリレート(PMMA)を用い、電極を蒸着済みの石英基板にスピンコートし、さらに電極を真空蒸着した。この基板にリ-ド線を取り付けて測定試料とした。光電流を測定するために、精密電流計を直流電源とともにリ-ド線の両端に直列接続し、電圧を印加しながら、光電流とともに蛍光励起スペクトルを測定した。PMMAの繰り返しユニットに対して、Cz10mol%およびDMTP1mol%の場合には、光電流が最大4pA観測され、その光電流スペクトルは蛍光励起スペクトルと一致した。一方、Cz1mol%およびDMTP10mol%の場合には、光電流は観測されず、Czの励起状態から生成するCz+が電流を運ぶキャリアーになっていることが示された。このとき、両サンプルにおいてCzとDMTPのエキサイプレックスの生成量に大きな違いが見られなかったことから、Cz10mol%およびDMTP1mol%のサンプルでは、Czの励起状態がCz間を移動し、DMTPが近傍にあるときに消光され、エキサイプレックスが生成していることが明らかになった。 今後の予定としては、ピコ秒時間相関光子係数法を改良した電場蛍光分光法の新規装置を用いて、さきのCz-DMTP系における光キャリアー生成のダイナミクスを調べ、試料に印加された電場が引き起こす蛍光消光速度定数の変化について検討する。
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