近年、フラーレン系やフタロシアニン(Pc)系などの中心対称性分子薄膜で比較的強い光第二高調波発生(SHG)が観測されており、その起源に興味がもたれている。このような系でのSHGは通常の電気双極子(ED)メカニズムでは禁制となるが、電気四重極子(EQ)や磁気双極子(MD)相互作用が関係する高次のメカニズムにより可能となる。本研究は、中心対称性有機分子薄膜でみられるSHGの基礎的データを測定、解析し、そのメカニズムを明かとすることを目的として行った。Pc系としてはバナジルおよびチタニル錯体(VOPc、TiOPc)を用い、分子線エピタキシ-法で配向膜(ラウエ対称4/mmm)を成長し、測定用試料として用いた。SHGの4回回転周りの回転角度依存性の測定結果からSHGの支配的なメカニズムとしてEQ相互作用が重要であることを見出した。また、EQメカニズムだけが関与する配置を選択してSHGスペクトルを観測し、新しい共鳴ピークを見出した。これは、通常の線形光学では観測できないものであり、電子遷移に関する新しい知見を得ることができた。さらに、分子軌道計算の結果と比較検討して電子状態の解析を行った。フラーレン系としてはC70について検討した。真空装置内で薄膜作製と共にSHG測定を行うといったその場観察の方法を用い、C70のSHG測定に初めて成功した。SHGのスペクトル測定の結果と分子軌道計算の結果との比較からC70ではMD相互作用の重要性が示された。
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