1分子層ずつ固体基板上に移しとって積層する薄膜作製法であるラングミュアーブロジェット(LB)法によって作製された高分極分子の非対称構造膜(Z型膜)は、二次の非線形光学特性を有し、高耐久性のものが得られればレーザー光学や光エレクトロニクスの分野において重要なデバイスとなり得る。本研究は非対称LB膜の欠点である構造的不安定性の解決のために、その分子設計と構築手法の指針を得ることを目的として行ったものであり、主な成果は次の通りである。 1.LB法による積層膜の構造的安定性の向上のために、5-(p-アルコキシフェニル)-2-ピラジンカルボン酸の疎水鎖末端に光重合可能なアクリロイルオキシ基を導入した両親媒性化合物を新規に合成した(メチレン鎖炭素数8、12及び16)。 2.メチレン鎖炭素数12の化合物はバリウム塩水溶液、カドミウム塩水溶液または銅塩水溶液のいずれのサブフェーズ上でも単分子膜の形成が確訳された。特にバリウム塩水溶液上の単分子膜は垂直浸漬法で石英基板状に累積可能であり、着膜形式はZ型であった。 3.メチレン鎖炭素数12の化合物のバリウム塩をZ型で多層累積後、低圧水銀ランプ光を照射し、フーリエ変化赤外吸収スペクトルより重合の進行を確認した。重合膜のX線回折測定より、この場合は着膜はZ型であるが、得られた累積膜はY型であった。そこで1層累積する毎に紫外線照射装置を用いて重合を行うことによって、Z型構造を保持した累積膜が得られた。この重合LB膜は非線形光学特性を示し、さらに未重合のものに比べて熱安定性、耐溶媒性に優れることが見いだされた。
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