カチオン性二核ロジウム錯体[(RhCp^*)_2(μ-CH_2)_2(CH_3CN)_2](BF_4)_2(Cp^*=η^5-C_5Me_5)(1)はアクリル酸エステルの選択的tail-to-tail二量化反応を触媒的に進行させる。その触媒性は非常に高く、1気圧の水素雰囲気下、ジクロロエタン溶媒中80℃でアクリル酸エチルの二量化反応のターンオーバーは3000以上に達した。また、中性の二核ロジウム錯体[(RhCp^*)_2(μ-CH_2)_2Me_2](2)は2当量のHBF_4・OEt_2存在下でのみ活性を示し、錯体1と同程度の触媒反応性を示す。これは、カチオン性の活性錯体がin situで生成したためであると考えられる。 アクリル酸エステルの二量化反応についてはこれまでも幾つかの遷移触媒金属について報告されているが、二核錯体を用いた反応は当研究が最初である。錯体1の比較的不安定なアセトニトリル配位子がアクリル酸エステルに交換することによって反応活性化し、2つの金属中心が有効に反応に関与していると考えられる。触媒反応の経時変化の観察から、触媒反応は比較的短期間に失活していることが分かった。反応後の不活性ロジウム錯体を単離し、その構造について調査した結果、[(RhCp^*)_2(μ-CH_2)_2(μ-CHCHCO_2R)](BF_4)と[(RhCp^*)_2(μ-CHCHCHCO_2R)(H)](BF_4)が生成していることが確認された。触媒失活後の錯体が二核構造を保っていることから、活性触媒種が二核錯体であることが確認されたと考えている。
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