研究概要 |
既に平成7年度の研究で、チオグリコシドとセレノグリコシドの新しい活性化法として光照射によるグリコシル化法を開発している。平成8年度はこの反応をさらに深く検討しそのスコープ&リミテーションを明らかにする事を目的とした。まずグリコシルドナーとしてセレノグリコシドを選び保護基(特に2位)や一重項励起増感剤の種類と反応性の相関を調べた。その結果、1)グリコシル供与体であるチオ及びセレノグリコシドの2位の置換基がエーテル型の場合は比較的高収率でグリコシル化が起こるのに対し、アシル型では加水分解がゆっくり進行しヒドロキシ体が生成すること、2)無保護の場合もグリコシル化が起こること、および3)増感剤の種類で反応性が異なることが明らかになった。 アクセプター(A)として用いた2,4,6-トリフェニルピリリウム塩(TPT)と1,4-ジシアノベンゼン(DCB)の蛍光がセレノグリコシドの添加によって消化され、その消光速度が(kq=10^<10>〜10^<11>s^<-1>mol^<-1>)溶媒の拡散律速(kdiff=〜10^<10>s^<-1>mol^<-1>)に近いこと、および酸化還元電位から見積もった電子移動の自由エネルギー変化が大きな負の値(△G=-23〜-26kcalmol-1)をとることから、反応は光誘起電子移動を経由するメカニズムで進行していると考えられる。また、2位がアセチル基であるセレノグリコシドの添加によってもTPTとDCBの蛍光が同様に消光されることから(kq=10^<10>〜10^<11>s^<-1>mol^<-1>)、この場合も電子移動は起こっていることが示唆される。よって、2位の置換基について観察されるarmed-disarmedの効果は、電子移動のステップではなくてアノマー位のC-Se結合の開裂のステップに効いていると考えられる。
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