(1)突然変異体のスクリーニング 神経筋シナプス形成に欠損のある個体は調和した筋の運動が不可能になるために幼虫が卵殻から出ることが困難となり、致死となることが予想される。そこで、トランスポゾンP因子が挿入した約1000系統を樹立し、その中から致死突然変異を起こした約200系統を選び出した。そのときに、1acZ遺伝子をはさんだP因子を使用したため、その突然変異をおこしている遺伝子が発現されている細胞をも明らかにすることができる(エンハン サ-・トラップ法)ので、さらにその中から、筋細胞あるいは運動神経で発現が見られるもの26系統を選択した。 得られた系統に関して、whole cell champ法を用いて、シナプス電流を記録し、野生型と比較した。ある分子の欠損によってシナプス形成が異常になればシナプス電流の異常として検出される可能性が高いので、この方法によって上の26系統から選択し、シナプス電流が正常個体より大きく減少した突然変異体MY7919を単離した。この変異体は、レポータ遺伝子の発現は運動ニューロンにあるが、シナプス前部だけでなくシナプス後部のチャンネル電流にも異常が認められるので、シナプス形成に重要な遺伝子の突然変異体である可能性が高いので、さらに、この変異体の解析をすすめることにした。 (2)MY7919の原因遺伝子のクローニング 東大物理学教室の堀田凱樹教授、高須悦子博士の協力を得て、MY7919の原因遺伝子のクローニングを行ったところ、既存のタンパク質とはhomologyのない全く新規な遺伝子であることがわかった。
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