完全寄生植物であるネナシカズラでは色素体ゲノムから核ゲノムに転移して機能している遺伝子が数多く存在していると考えられる。本研究ではネナシカズラにおいて色素体から核に転移した遺伝子をより多く単離することを目的として、ネナシカズラの色素体ゲノム上で欠失あるいは偽遺伝子化した遺伝子の検索、と核ゲノムへ転移した遺伝子のcDNAの単離を行った。 ネナシカズラのゲノミックライブラリーより色素体DNA断片を含んだクローン約30種を単離した。また、クローンが得られていない色素体DNAの部分についてはPCR法によって増幅した。このようにして得られた色素体DNA断片の構造を決定することにより、ネナシカズラの色素体ゲノム上で欠失あるいは偽遺伝子化した遺伝子をさらに数多く見いだした。ndh遺伝子はndhB、ndhDが偽遺伝子として残存している以外は欠失していることが明らかとなった。またリボソームタンパク遺伝子 rps16やイントロンを含んだtRNA遺伝子trnKも失われていることが示唆された。これに対して、他種のネナシカズラで欠失していたrp12、rpoC2両遺伝子は今回解析を行った日本産ネナシカズラでは色素体ゲノム上に存在していることが示唆された。核へ転移していることが予想された遺伝子のうちndhA、rps16、trnKについてプライマーを設計し、ネナシカズラ芽生えのRNA由来のcDNAやネナシカズラのゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。その結果、各cDNAあるいはゲノムDNA断片を増幅することができた。これらの結果から各遺伝子が実際に核へ転移していることが強く示唆された。
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