Iwasa et al.(1991)やSato and Iwasa(1993)では、縞枯れ現象の形成・維持を説明するために、小林分を森林の構成単位としてひとつのセルに対応させたセルオートマトンモデルの解析を行なっている。そこでは、一方向から吹いてくる恒常風の影響により、風上側との樹高差が大きい場合に立ち枯れ、そうでなければ単位樹高だけ成長するという極めて単純なルールから、縞枯れ現象の基本的なパターン形成を説明することに成功した。しかし、Iwaki and Totsuka(1959)によって模式的に示されているような、初期のいくつかの小さな撹乱を中心として立ち枯れ領域が徐々に拡大していき、半月形パターンを経て最終的にこれらがつながった直線形パターンが現れてくることについては、十分な解答を与えていない。本研究においては、風避けの効果をもたらす樹木がいままでの基本モデルよりもさらに広い範囲であると仮定することによって、半月形パターンを経た直線形パターン形成を再現することができた。さらに、大規模な撹乱が起こった後に対応すると考えられるランダムな初期条件から行なったシミュレーションでは、直線形パターンの規則性を与える指標について、基本モデルと比較して、よりよい結果が得られることがわかった。これらのモデル解析は、本年度の補助金で購入した高性能のパーソナルコンピュータ上での、数値計算とグラフィックスによる視覚化を行なうことにより遂行することができた。
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