研究概要 |
シロイヌナズナの胚軸や根の断片をカルス誘導培地(0.5mg/L2,4-Dと0.1mg/L kinetinを含有)で前培養後に、シュート誘導培地(0.15mg/LIAAと0.5mg/L isopentenladenineを含有)に移植すると、シュート再分化が誘導される。このとき、前培養中に1-10μMの5-ブロモデオキシウジン(BrdU)で外植片を処理すると、その後のシュート再分化が促進されることを見出した。50μM以上の濃度のBrdUの前処理した場合には、胚軸外植片でのみシュート再分化およびカルス形成の強い阻害が認められたが、これは脱分化過程における増殖能獲得段階の妨害によると考えられた。 EMSで突然変異を誘発したシロイヌナズナの後代より、胚軸外植片を高濃度のBrdUで前処理してもシュート再分化が阻害されないような変異体を2系統(♯291、♯1549)単離した。シュート再分化に対する促進効果については、♯291ではBrdU感受性が低下していたが、♯1549では野生型と変わらない感受性が見られた。また、♯1549のシュート再分化はBrdU前処理の有無に関わらず、野生型の場合と比べて約4日遅れた。チミジンの吸収やDNAへの取り込みについては両系統とも正常であり、BrdUの吸収や代謝に関連した変異ではないことが示唆された。以上の結果から、♯291と♯1549はBrdUによる脱分化妨害に関する一種の(しかも異なったタイプの)抑圧変異体として位置づけられ、脱分化機構解析のための有効な道具となり得ることが示された。
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