1.クロロフィル670(Ch1-670)の役割 C.tepidumから嫌気的に単離・精製した反応中心複合体標品について、低温77Kにおけるレーザー閃光照射実験を行い、吸収スペクトル変化を解析した。反応中心には、P840あたり4-6個のCh1-670が存在し、その内1個は一次電子受容体A_0として機能していることか知られている。閃光照射後、668nmにCh1-670に由来するエレクトロクロミック・レッド・シフトが観測され、時定数(t_<1/e>)35msで減衰した。しかしウレア処理により、末端電子受容体であるFe-Sクラスターを破壊したところ、A_0^-形成による671nmのマイナスピークとレッド・シフトが重なった複雑な吸収変化が検出された。このことは、複合体に存在するCh1-670は均一な成分ではなく、配向性や機能の異なることを示している。P840^+の形成とともにエレクトロクロミック・レッド・シフトするCh1-670はP840のごく近傍に位置し、アクセサリーとして機能しているのであろう。 2.チトクロムcとP840の反応機構解析 C.tepidumのチトクロムc遺伝子のクローニングとDNA配列の決定を行った、全部で206アミノ酸残基からなるモノヘム型のチトクロムcであり、C.vibrioformeとは84%の相同性を示した。N末端半分は膜を3回貫通する構造をもち、ヘムcが結合するC末端領域は親水性という特徴をもつ。チトクロムcとからP840への電子移動速度は、グリセロールにより反応混液の粘性をあげると、極端に遅くなることがわかった。このことは、ヘム部分が娠り子のように大きく揺らぎながら、P840へ電子を渡していることを示唆している。
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