イネは代表的な短日植物であり、開花時期に影響を与えるさまざまな遺伝子座が同定されているが、いまだ遺伝子単離には到っていない。そこで、我々は、非自律性転移因子Dsと転移酵素をコードする35S-AcTPase導入形質転換イネを交配して得られた個体(F1)の自殖後代(F2)を用い、開花時期が早くなる個体を選抜し、その後代を用いた解析を行っている。 開花が早い突然変異系統B-10-1-80は安定な表現型を示し、Dsを1コピーゲノム内に持っている(Ds80)。この系統を短日・長日条件下で栽培すると、短日条件下では開花に差は見られないが、長日条件下で約10日開花が早くなる。このことから、この系統の変異した遺伝子は、本来、その機能が短日条件において抑制されるため、短日条件下での開花に変化がないと考えられる。F2解析の結果、B-10-1系統は2つの遺伝子変異を持つと推定された。そのうち、ひとつは優性変異、もう一方は、劣性変異と考えられる。Ds80と表現型の連鎖を調べたところ、開花時期が野生型と同じF2個体にDs80をヘテロの持つ個体が複数存在するので、優性変異がDs80のタッグによる可能性は低いことが明らかになった。現在、もう一方の劣性変異とDs80の連鎖についてF3世代を用いて解析中である。 突然変異系統C-2-3-241系統のF5世代を用い、開花時期を調べたところ、短日条件下で平均6日、長日条件下で平均12日早く開花するとの結果を得た。このことから、C-2-3系統の変異した遺伝子は本来、恒性的に開花を抑制する機能を持つ遺伝子と推定される。C-2-3-241はDsを1コピーのみゲノム内に持ち(Ds241)、現在、表現型とDs241の連鎖について解析を行っている。 RI系統及びYACクローンによるマッピングの結果、Ds80は染色体6番、Ds241は染色体11番にそれぞれ座乗することが明らかになった。
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