等脚甲殻類オオグソクムシの心臓拍動は、様々な動物運動時に促進される。この心拍促進は、心臓興奮(CA)ニューロン活動の活性化と心臓抑制(CI)ニューロン活動の抑制により引き起こされる。CIニューロン細胞体は胸部第1神経節(TG1)に、CAニューロン細胞体は、TG2およびTG3に存在する。両ニューロンから細胞内および細胞外誘導法によりニューロンの活動記録し以下のことを明かとした。 1.歩脚や遊泳肢への自発的運動時にはCAニューロンインパルス頻度を増大させ、CIニューロンインパルス頻度を減少させた。2.胸部および腹部神経節の各神経節神経の求心性刺激は、CAニューロンにEPSPを、CIニューロンにIPSPを惹起した。3.歩脚および遊泳肢の人工的運動は、CAニューロンにEPSPを惹起した。4.腹髄下動脈潅流による薬物投与により、CAニューロンは、モノアミン類で興奮した。アセチルコリンの単独投与は、CAニューロンを興奮できなかったが、エゼリン前処理により、アセチルコリン投与はCAニューロンを興奮した。5.TG2およびTG3のツボクラリン潅流は、末梢神経の求心性刺激によるCA興奮を抑圧した。6.TG2およびTG3のクロルプロマジン潅流は、縦連合神経刺激によるCA興奮を抑圧した。 これらの結果から、以下のことが推測された。動物運動時の心臓促進は、脳神経節およびTG1からCAニューロンを興奮させ、CIニューロンを抑制する回路(1)と末梢の機械自己受容器からCAニューロンを興奮させる回路(2)が関わっている。回路(1)には、ドーパミン作動性ニューロンが関わっている。一方、回路(2)は、コリン作動性ニューロンが関わっている。
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