研究概要 |
材料のツメナガウミグモは、全て伊豆・下田近海より春季にドレッジにより採集し、雄成体が抱える受精卵及び初期幼生を、過去の方法に従い20℃の恒温器内で、アルテミア幼生を餌として止水飼育し、得られた各後胚発生段階(9令まで)の幼生を組織切片及び走査型電子顕微鏡用試料とした。飼育中途で死亡する個体が、予想以上に多く出たため、8令以降の後期幼生は、数個体づつしか得られなかったため、冬季に追加採集を行い、補填した。 このウミグモについては、成体における雌性生殖器官系の形態が、他のウミグモのそれと大きく異なっていることが、研究代表者により既に観察されていたが(宮崎,投稿準備中)、今回の研究によって、後期幼生の段階で、他のウミグモで普通にみられる形態を経ることがわかり、成体における特殊な形態が、二次的に変形したものであることが、明確に示された(宮崎,投稿準備中)。 その他、ウミグモ類の系統進化的観点より特に注目していた、頭部付属肢と合体節の形成過程については、それぞれ3令から4令にかけて、外部形態、内部形態ともに劇的に変化することがわかったが、変化があまりにも急激なため、現時点ではその過程を追跡しきれておらず、現在、該当する時期の幼生の組織切片を順次作成して、解析を行っている。 以上のように、研究期間の短さから、解析が不十分な点も残ったが、いくつかの新知見とともに、今後更に詳しい観察を行うための基礎的なデータを、得ることができた。
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